楽天人の独り言①  「今の若いもんの考えとることは、ようわからん」

昔から、「今の若いもんの考えとることは、ようわからん」(すみません、博多弁です)とよく言われたものである。

私も、いろんな場面で、若い人の視点が異なることによく遭遇する。自分の若い時の経験を思い出してみると、先輩方にかなり強烈なことを言っていたような記憶がある。今思えば、汗顔の至りと深くお詫びしたい気持ちである。

1970年頃(私は、未だ大学院学生であった頃)、当時の教授に、自分の考えていることを直言したことがある。その当時の教授の言、「君たちはいいな。好きなことが言えて」と言われた。当時は、私は「正しい」と思うから教授に話したことであって、「自分の意見を採用しろ」とかは考えてもいない。ただ、ただ、自分のためでなく、自分の教室やこれからの研究のために「よかれ」と思っていたことを、発言しただけである。ところが、教授からは「好きなことが言えて、君たちは幸せだな」との反応であった。若い時は、その教室の歴史やしきたりも知らず、自分が生きてきた乏しい経験から「こうしたほうが良いのではないか」と思ったことを率直に述べたに過ぎない。

このことから考えると、先輩が考えることと若い人が考えることとは視点が異なっているので、「今の若いもんの考えとることは、ようわからん」となるのは当然のような気がする。若い時は、当時の若者の価値観で先輩に遠慮なく話しているのだ。今、先輩の立場に立って、その言葉を聞けば、「今の若いもんの考えとることは、ようわからん」となるのだが、昔、同じことを自分も先輩に話して、当時の先輩から、「今の若いもんの考えとることは、ようわからん」と思われたに違いない。

自分が先輩になったからと言って、一概に、「今の若いもんの考えとることは、ようわからん」と切り捨てるのはいかがなものであろうか? 若い者の生意気な意見から、時代の変化を読み取り、新しい時代へ変化するヒントをつかむのが、新しい時代の変革に重要なのではないだろうか。

(産業医科大学名誉教授)

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