健康管理の課題への二つのアプローチ

健康経営の話題に入る前に、私自身と九州もしくは福岡との関係性を振り返ってみたい。大学時代(90年代前半)に、飯塚近辺の大学に進学した友人の車で岡山-福岡間を一般道で往復したことがある。その際にラーメンを食べに行ったが、芋焼酎ともども、強烈な個性に打ちのめされ、手も足もでなかった苦い思い出は今も忘れられない(現在、少しずつレベルを上げながら再チャレンジ中)。

さて、健康経営について言えば、まず健康管理に対する企業による投資をインプットとし、社員の健康向上および企業の業績アップをアウトプットとみなす単純なものと捉えてはいけない。慢性疾患中心の健康管理にあっては、会社にできることは社員の健康管理に対する「動機づけ」程度であって、健康管理そのものを会社が肩代わりすることはできない。平たく言えば、会社の食堂で健康メニューは提供できても、食べるかどうかを最終的に決めるのは社員自身にほかならない。さらに、医療的な視点で産業保健職を中心に行われてきたこれまでの健康管理では、自覚症状のない社員は容易には思惑通りの健康行動はとらないものである。

こうした課題に対するアプローチとしては大きく二通りが考えられる。ひとつは、職場である利点を活かし、コンプライアンスと結びつけ、いわば業務の一環として社員自身に健康管理に取り組んでもらう方法である。例えば、一般定期健康診断の受診は社員にとっても労働安全衛生法に規定される義務である。もうひとつは、行動経済学などの産業医学以外の領域における知見を柔軟に活用する方法である。たいていの健康行動は、いま食べたいものをガマンし、少々つらくとも運動して、将来の疾病予防という利益を得るための投資行動といえ、他領域から学べることは実はかなりある。

合理的に考えれば、健康が業務遂行上の基礎になることは自明であるわけだから、健康管理は自ら主体的に取り組むべきものに決まっている。しかし、人間はそこまで合理的にはできていない。この「人間らしさ」のようなものを受け入れたうえで、いずれのアプローチが九州もしくは福岡との相性がよいのだろうか。今後、検討を進めていくうえで微力ながらお役に立つことができれば幸いである。

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